インプラント

「虫歯で歯が残せないので、抜くしかないと言われた。」

「歯周病で周りの骨が溶けてしまったので、抜くしかないと言われた。

「歯にヒビが入っっているので抜かないといけないと言われた。」

歯を抜かないといけない理由は様々です。

インプラント状態が悪く、抜かないといけない歯は早めに抜いて、次の歯を入れる治療をする必要があります。
強い症状がないから、抜くのが嫌だから、といった理由で残すことができない歯を置いたままにしておくと、歯並びや噛み合わせが悪くなったり、歯の周りの顎の骨がどんどんと溶けてしまうことがあります。

歯を入れる方法としては大きく、入れ歯、ブリッジ、インプラントがあります。
歯を失ったところへ、人工の歯根(歯の根っこ)を手術により埋め込み、その上に歯を補うインプラント治療ですが、今ではブリッジや入れ歯と同じように、スタンダードな治療になってきました。

昔は、入れ歯が合わない方が、しっかり噛めるようにインプラント治療を受けることが多かったですが、最近では若い方でも1本歯を抜いた部分にインプラントを入れたりと、年齢問わず多くの方に選ばれております。

メディアでも目や耳にする機会が増え、名前は知っているかもしれませんし、周りでインプラント治療を受けられた方もいらっしゃるかもしれません。

インプラントとは

インプラントとは

虫歯で歯が残せない、歯周病で歯がグラグラして残せない、歯にヒビが入って歯を残せない、様々な理由で歯を抜かざるをえないことがあります。
その際、抜いた部分に歯を補う治療法補の一つに、インプラント治療があります。

インプラントとは、歯がない部分の顎の骨に、歯の根っこ(歯根)の代わりとなるチタン製の人工歯根を埋め込み、その上に被せを入れる方法です。

ブリッジや入れ歯などの他の他の治療と違って、保険が効かず費用がかかったり、手術が必要になったりしますが、その分、見た目も綺麗でしっかり噛めるようになります。また、ブリッジと違い、他の健全な歯を大きく削らなくて良いのも特徴です。

インプラントの歴史

1952年、スウェーデンの整形外科医・ブローネマルク博士が、動物実験中に、偶然骨の中に埋め込まれたチタンがくっ付いて撤去できなかったことから、チタンが骨と直接、強固に結合している事を発見しました。

その後、チタン製の歯科インプラントの研究・開発が始まり、ブローネマルク博士は1965年に初めてチタン製インプラントを患者の顎骨に埋入しました。このインプラントは、患者が2005年に亡くなるまで40年間機能し続けました。
日本で初めてチタン製インプラントによる治療が行われたのは、1983年のことです。
入れ歯と違い、インプラントは自分の歯と同じようによく咬むことができますし、思いきり笑ったり、はっきりと話ができるようになるため、生活の質(Quality of Life)を向上させる治療方法として、日本でも普及してきました。

元々は整形外科医のブローネマルク先生が、微細な血流の研究をしていたところ、偶然に発見された技術を用いております。
インプラントと聞くと、ここ最近の技術というイメージがあるかもしれませんが、もう60年ほど前には使われていました。
日本でもすでに40年前からインプラント治療は行われており、昭和の時代にインプラントを入れたという方も少なからずいらっしゃいます。
もちろん、インプラントの形や性質は進化してきています。

インプラントの構造

インプラントの構造

インプラントは「チタン」という素材でできています。
チタンは、アレルギーも少なく、かみ合わせに耐えられる強度があります。チタンは、整形外科では人工関節にも使われる材料で、とても生体親和性が高い(人体への害が少ない)ので安心です。手術により、顎の骨にインプラントを埋め込み、チタン製のインプラントと顎の骨が、時間をかけ直接的に結合(オッセオインテグレーションという)していきます。

インプラント本体である人工歯根(フィクスチャー)の上に土台となるアバットメントをつなげ、その上にセラミックやジルコニアでできた人工の歯を乗せるという複雑な構造をしております。

骨としっかり固定されるため、天然の歯とほとんど変わらない感覚で物を噛んだり、会話を楽しむことができ、見た目にも綺麗です。
また、入れ歯やブリッジなどの治療法と違い、残っている歯を削ったり、余計な負担をかけないため、ご自身の残りの歯を長くもたせることが出来きる治療と言えます。

インプラントは骨とくっつくため、力強く噛むことができますし、見た目も天然の歯とほとんど変わりないため、とても素晴らしい治療と言えます。
しかし、天然の歯と比べるとケアが難しかったり、インプラントやアバットメント、人工歯という複雑な構造をしているため、お互いを固定しているネジが緩んだり、場合によっては外れたりするトラブルも生じます。

技術は進歩しているとは言え、ご自身の歯を再生させるような技術はまだまだできそうにありません。
歯が抜けた、歯を抜かないといけなくなった場合に、インプラントという素晴らしい選択肢はありますが、まずは本当にその歯は抜かないといけないのか?なんとかして残す方法はないか?をしっかり診査・診断して見極めることが大切だと思います。

当院では3次元的に歯や骨の状態を確認できるCTや何十倍もの高倍率で細部まで観察できるマイクロスコープを完備しておりますので、抜かないといけない歯があると言われたが、そういった診査を受けて見たい方は、一度ご相談ください。

インプラントを入れる手術の前に

インプラントを入れる手術の前に

歯を抜いてしばらく経った場合は別として、まずは虫歯や歯周病、ヒビが入ったりして残せない歯を抜きます。
そして抜いた後の歯茎や顎の骨が治るまで2〜3ヶ月待ちます。
できたらその間に他の歯の虫歯治療や、歯周病治療、あるいはインプラント手術に影響する可能性がある病気がある場合は、そちらの治療を専念します。

例えば糖尿病や高血圧、骨粗しょう症、心疾患などです。
他の病気の具合によっては、インプラント手術ができない場合もあり、その場合はブリッジや入れ歯の治療に変更せざるを得ないことがあります。また、喫煙をしていると、顎の骨とインプラントが上手くくっつかなかったり、手術後の歯茎がなかなか治らず、そこから細菌感染が生じるリスクがあります。

タバコは歯周病や全身疾患のリスクも上げるため、早期の禁煙をお願いします。
インプラント治療のリスクも参考にご覧ください。

2〜3ヶ月して骨の状態やインプラントを入れる位置や方向の確認のために、CTという3次元的なレントゲンを撮ります。通常問題がなかったり、多少骨が少ないくらいなら、インプラントを入れる手術にうつります。

しかし、広範囲にわたって大きく骨の厚みや高さがない場合は、インプラント手術の前に、ご自身の骨(親知らずのあたりや、顎の下の方の部分から取ってくる)や人工の骨を用いて、インプラントをきちんと埋め込むための骨を作る処置をする必要があります。これを骨増生や骨移植と言いますが、移植した骨が今ある骨としっかりとくっつくまで約6ヶ月待つ必要があります。

その後、しっかりと骨ができているかの確認のため、もう一度CTを取ります。問題がなければい、いよいよインプラントを入れる手術になります。

インプラント手術の流れ

1まずは体調等の確認をします

健康状態に問題ないか、緊張して気分がすぐれないかなどを確認します。
「手術」と聞くと不安だと思いますが、そこまで痛みは出ないですし、時間もそこまで(インプラントの本数や処置によりますが)かかりませんので、リラックスしてお越しください。

2麻酔をします

インプラントを入れる部分の周りに麻酔をします。
歯茎を切ったり、骨を削ったりしますが、健康な感染のない歯茎や骨をさわるので、そこまで痛みは伴いません。
インプラントを入れる本数にもよりますが、麻酔も歯の治療をするときと同じ量、あるいは少し多いくらいも量しか打たないことが多いです。
実際ズキズキ痛む歯の治療や親知らずの抜歯の方が、処置としては痛いと思います。(炎症が強い場合は麻酔も効きにくいです。)

3麻酔が効くまでクリーニングをします

麻酔が効くまでの間、少しでもお口の中の細菌の量を減らすために、お口のクリーニングをします。
この間はお話もしながらクリーニングを受けて、リラックスしていただきたいと思います。

4歯ぐきを開き、骨が見える状態にします

インプラントは顎の骨に直接入れます。
そのため、上に乗っている歯ぐきを切り、開いて顎の骨が見えるようにします。
骨がボコボコしている場合は、この時平坦になるよう整えます。

5インプラントを入れる穴を開けていきます

キリのような細いドリルから順番に太いドリルに変えていき、インプラントが入るためのねじ穴を開けていきます。
上の歯のインプラントの場合、奥歯の方では副鼻腔が近いことがあり、インプラントを入れるだけの骨の高さが足りない場合は、副鼻腔を触る処置が必要になります。(ソケットリフト、サイナスリフト)

インプラントを入れる穴を開けていきます
インプラントを入れる穴を開けていきます

5インプラントを入れる穴を開けていきます

インプラントを入れる穴を開けていきます インプラントを入れる穴を開けていきます

キリのような細いドリルから順番に太いドリルに変えていき、インプラントが入るためのねじ穴を開けていきます。
上の歯のインプラントの場合、奥歯の方では副鼻腔が近いことがあり、インプラントを入れるだけの骨の高さが足りない場合は、副鼻腔を触る処置が必要になります。(ソケットリフト、サイナスリフト)

6インプラントを入れます

インプラントを入れます開けた穴に、インプラントの本体を入れていきます。
ネジを入れる要領で回転させながら顎の骨の中に入れていきます。
どうしても骨が少なく、インプラントが部分的に見えてしまう場合は、骨が足りない部分にご自身の骨(周りの骨を少し削って集めます)や人工の骨を加えて固定することもあります。

7歯ぐきを縫合します

歯ぐきを縫合します無事に顎の骨の中にインプラントが入れば、インプラントの上に蓋をして歯ぐきを閉じて縫っていきます。
その後は、歯を抜いた時と同様、ガーゼを噛んでいただき、血管を圧迫させ、止血をします。

8術後の説明

ガーゼを噛んで止血をしながら、術後の説明をします。
お薬の説明や、術後の注意事項を説明します。
また、その後の流れ、いつ糸を取るのか(抜糸)、いつ型をとるのか(印象)、いつ歯が入るのかなどをご説明します。

これがインプラントを入れる手術当日の流れになります。
一般的なインプラント手術の場合ですので、本数が多い場合や骨を足す場合などは多少異なる場合があります。

手術の後は後日、腫れたり強い痛みがないかなどの問題がないかを一度確認し、手術した部分を消毒します。
そして、約1週後に糸を抜きます。

その後は、顎の骨の中でインプラントと骨が時間をかけて隙間なくくっ付いていくまでの間、約3ヶ月待ちます。
しばらくしてから、歯を入れるための型取りをして、人工の歯を装着します。
その後は、装着したインプラントに不具合がないかを確認したり、磨き残しがある部分をクリーニングしたりと、定期的メインテナンスを行なっていきます。

術後の説明
術後の説明

インプラント治療は、ブリッジや入れ歯の治療と違って、時間がかかります。その分、他の治療と違い、しっかり噛めたり、見た目も美しい歯が入ります。
長期間になりますので、一緒に二人三脚でがんばっていきましょう!

インプラントの相談は、随時承っております。

インプラント治療のメリットとリスク

虫歯や歯周病、歯が折れたり、ヒビが入って歯を抜くことになってしまった。
その場合、入れ歯やブリッジ、インプラントなどで治療し、歯を補っていくことになります。

歯を虫歯や歯周病で抜くことになってしまったのでインプラント治療をすすめられた。
今使っている入れ歯が合わない、噛みにくいのでインプラントにしてしっかり噛めるようにしたい。
など、インプラント治療は歯がないところに歯を補う治療方法として、ブリッジや入れ歯と並び多く選択される治療になってきました。

インプラント治療のメリット

特にインプラント治療は・・・

1しっかり美味しく噛める

硬い骨で歯を支えるため、しっかりと噛むことができます。
入れ歯の場合、大部分は柔らかい歯ぐきで支えるため、噛む力は天然の歯と比べて約30%と言われるため、力いっぱい噛むことができません。また、少しでも当たりが強い所があると歯茎に傷ができて、痛みを生じます。

骨にしっかりと固定されているため、入れ歯のように取り外しや手入れの必要がありません。

2健康な歯を削らない

ブリッジの場合、健全な前後の歯を2本、被せが入るように削らないといけません。歯がない本数が多い場合、それに応じて健全な歯を削る本数も増えていきます。
また、入れ歯の場合はほとんど歯は削りませんが、入れ歯を支える針金が通る部分を少しだけ削らないといけません。
インプラントの場合は、歯がない部分だけ治療し歯を入れるため、他の歯を削ることがありません。
言い換えると、他の歯も守ることができます。

3見た目が天然の歯に近い

インプラントの場合、取り外しの入れ歯や、被せがつながったブリッジと違い、失った部分にだけ歯が入ります。
構造も人口の根っこを骨に入れ、土台と被せを付けるので、ご自身の歯の形ととても似ており、見た目が天然の歯に近いのが特徴です。

特に前歯では、他の治療と比べ、お口を大きく開けて話したり笑っても、天然の歯のようにきれいで目立ちません。

4全身の健康にもつながる

これは他のブリッジや入れ歯にも共通しますが、歯がないままだと食事がしにくく栄養が偏ったり、食への楽しみが徐々に減っていきます。しっかり噛むことで、脳が刺激され認知症予防にもなりますし、しっかり栄養を取ることで糖尿病や高血圧の予防にもなります。
また、みんなで美味しいものを楽しく食べることで、生きる楽しみが生まれ、生活の質(Quolity of life)の向上にもつながります。

など他の治療にはないメリットがあります。

しかし、保険外診療で高額な治療になるため、誰でも気軽に受けられるというものではありません。
また、他の治療と違い、インプラント治療は外科手術が必要であるため、治療を受けるには全身の健康状態が良好である必要があります。

インプラント治療を行える条件は、インプラントを埋め込む予定の場所に、十分な量の骨(高さや幅)があることです。骨が足りないとインプラントを埋め込むことができないため、その場合は骨が足りない場合は、GBRやサイナスリフトといった骨移植手術を併用する必要があります。

十分な骨の量があっても、安全性の高いインプラント治療を行い、術後も良好な状態を保つことへの妨げとなるリスク因子がいくつかあります。
リスク因子が多い方は、せっかく手術を受けて埋め込んだインプラントが、うまく骨と結合せず、抜け落ちることがあります。

インプラント治療においてのリスク

インプラント手術の際のリスク因子には、以下の「全身的リスク因子」と「局所的リスク因子」があります。

全身的リスク因子
タバコを吸っている

インプラントは、手術であごの骨に埋め込まれた後、時間をかけて骨とくっついていきます。
オッセオインテグレーションといい、顕微鏡で見ても隙間がないくらい、インプラントと骨が強固に結合するため、力強く噛むことができます。
その際に骨の中の毛細血管の流れ、酸素の運搬量が重要になります。
タバコを吸っている方は、タバコに含まれるニコチンにより血管が収縮されることで、血液の流れが悪くなります。
さらにタバコに含まれる一酸化炭素は、血液中のヘモグロビンとくっつきやすいため、ヘモグロビンが酸素を運搬するのを邪魔することで、インプラントの周囲の酸素量が減少します。
血流が悪く、酸素の運搬量も少なくなるため、インプラントと骨が結合しにくくなるリスクが高くなります。タバコは歯周病を早める原因にもなりますので、出来る限りの禁煙をお願いします。

糖尿病

インプラント治療を受ける際は、血糖値のコントロールがされている必要があります。
糖尿病の方は白血球などの免疫細胞の働きが低下するため、手術時の感染リスクが高くなります。
インプラントの周りに感染が起こると、インプラントと骨がくっつかなくなります。また、糖尿病はストレスによって症状が悪化することがあるため、手術中の低血糖や高血糖に注意する必要があります。

高血糖やインスリン不足の状態が続くと、骨を作る骨芽細胞の数や働きが低下するため、骨代謝がうまく行われず、インプラントと骨が結合するのが阻害されてしまいます。
インプラント治療が可能かどうかは、HbA1cの値がコントロールされているかどうかで判断します。

高血圧症

インプラント治療には手術が必要です。
降圧剤により結圧がコントロールされている状態であっても、不安や痛みなどのストレスによって、血圧が上がることで、手術中に体調が悪くなったり、出血が止まらなくなるリスクがあります。
手術後も出血が続くおそれがあります。

骨粗鬆症

骨粗鬆症の方は骨密度が低下するため、インプラントと骨が結合する際のリスクが大きくなります。骨が弱いことにより、インプラントを骨に入れた際にインプラントを維持する力が弱かったり、骨と結合した後も支えが弱くなります。また、骨粗鬆症の治療に用いられるビスフォスフォネート系の薬を服用している場合、インプラント埋入はできない場合もあります。

その他、手術に悪影響を及ぼす疾患がある場合

そのほかにも、脳梗塞や心筋梗塞、自己免疫疾患や精神疾患など、手術に影響を及ぼす疾患がある場合は、インプラントの手術が受けられない場合があります。

局所的リスク因子
歯周病が進んでいる

インプラントは人工物でできているため虫歯になることはありません。
しかし、インプラントと歯ぐきの間から歯周病菌が侵入し、歯周病のような炎症が起きることがあります。
インプラントの周りに起きる炎症なので「インプラント周囲炎」と呼ばれます。
他の歯の歯周病が進んだままだと、インプラント周囲に歯周病菌が感染しやすく、せっかく入れたインプラント がダメになるリスクがあります。
インプラント手術の前に、歯周病治療をきちんと終わらせる必要があります。

虫歯を放置している

インプラントは虫歯にはなりませんが、他の歯に虫歯があると、お口全体の細菌の量が増えることで、インプラント周囲炎のリスクが上がります。
また、虫歯の歯があることで、インプラントの歯に噛む力が集中することで、インプラントに付ける人工歯が破損したり、インプラントと人工歯を止めるネジがゆるんだり、破損する原因になります。
インプラント手術の前に、虫歯治療をきちんと終わらせる必要があります。

かみ合わせが強い

インプラント を入れた後、上に人工歯を装着し、噛めるようになりますが、噛み合わせが強い場合、インプラントに無理な力がかかってしまいます。
そうなると、人工歯が壊れたり、人工歯とインプラントを止めているネジがゆるんだり、破損する原因になります。
また、周囲の骨にも過度な力が加わることで、インプラントと骨の結合の妨げなったり、インプラント周囲炎のリスクとなります。
噛み合わせが強い場合、こまめな噛み合わせの調整(咬合調整)をする必要があります。

歯ぎしりや食いしばりをしている

歯ぎしりや食いしばりがあると、インプラントの歯に強い持続的な力がかかります。
そうなると、人工歯が壊れたり、人工歯とインプラントを止めているネジがゆるんだり、破損する原因になります。
また、周囲の骨にも過度な力が加わることで、インプラントと骨の結合の妨げなったり、インプラント周囲炎のリスクとなります。
歯ぎしりや食いしばりがある場合、マウスピースを装着して、噛む力が過度にかからないようにする必要があります。

インプラントを埋め込む部分の骨の量が少ない、骨が柔らかい

インプラントの骨に入れる際、あごの骨の高さや幅、骨密度が重要になってきます。
インプラントは、あごの骨に入れてから約3ヶ月ほどかけて徐々に結合していくため、インプラントを入れる部分の骨の量や硬さが不十分だと、入れた直後の固定(初期固定)が緩く、骨との結合がうまくいかないことがあります。
事前に骨量や骨質については、歯科用CT撮影を行い、3次元的に問題がないかを判断する必要があります。
骨が足りない場合は、GBRやソケットリフト、サイナスリフトといった骨を人工的に補う処置が必要になります。

ご自身の歯と同じような自然な見た目で、しっかりと噛むことができるようになるインプラント治療。
それに必要なインプラント手術には、多くのリスクがあります。
特に喫煙に関してはインプラント治療限らず、日常の歯科治療においても、全身の健康に対してもかなりのリスクとなるため、出来る限りの禁煙をお願いしております。
また事前にきちんと虫歯治療や歯周病治療を終える必要があるため、すぐにはインプラント治療ができない場合があります。
人によって様々なリスク因子がありますので、歯がない部分がある、歯が揺れていて噛めない、入れ歯が合わないなどでインプラントをお考えの方は是非ご相談ください。

インプラントは定期検診が大切です

インプラントは定期検診が大切です

インプラントは入れ歯やブリッジと同じく、歯がないところに歯を入れる治療の一つです。
生まれて歯がない赤ちゃんの状態から、乳歯が生え、そして成長に従って乳歯の代わりに永久歯が生えてきます。しかし、永久歯が虫歯や歯周病で抜けてしまえば、その後歯が自然に生えてくることはありません。

歯がない部分の顎の骨にインプラントを入れ、上に人工の歯をかぶせて歯が生えたように見える、いわばインプラント治療は、乳歯、永久歯に続く「第三の歯」と言えます。

 

虫歯や歯周病、歯がヒビが入って割れたなどの理由で、歯を抜くことがあります。歯を抜いたところには、そのままにしておくと、噛みにくかったり、全体の歯並びや噛み合わせがずれたりする恐れがあるため、新しく歯を入れる必要があります。
ブリッジや入れ歯による治療方法と比較され、インプラント治療を受けるのに納得されたのであれば、いよいよインプラントを入れる手術になります。

 

インプラント治療を始めて約3~4カ月、歯を抜いたところから数えると半年以上もかかるインプラント治療ですが、頑張って手術の受け、被せがきれいに入ったときには、天然の歯と同じようにしっかり噛めるようになっているでしょう。

定期検診の重要性

定期検診の重要性

天然の歯でも、歯周病というのは症状が強く出ることが少ないので、ご自身では気が付きにくいと言われています。

そこで定期的に歯科医院で歯と歯茎の溝の深さ(歯周ポケット)を確認してもらったり、腫れたり膿んだりしていないかの確認、あるいはレントゲン写真により顎の骨が溶けていないかを定期的にチェックしてもらう必要があります。そして、ケアがうまくできていないところは指導を受けたり、専用の器具を用いてきれいにメインテナンスしてもらうことが大切です。

インプラントも同様です。

天然の歯と同じように、インプラントと歯ぐきの間には溝(ポケット)があるため、きちんと磨けているか、炎症が出ていないかを確認する必要があります。
「インプラント周囲粘膜炎」「インプラント周囲炎」になっていないかの確認を定期的に受けることは、とても大事です。

前述のように、インプラントは構造上、天然の歯よりも歯周病になりやすく、進行も早いのが特徴です。せっかく、時間や費用をかけ、手術まで受けて入れたきれいなインプラントの歯。
インプラントを入れて噛めるようになったから治療は終わり、ではなく、そのインプラントを一生持たせるために、しっかりとしたご自身でのホームケア、歯科医院での定期検診、プロフェッショナルケアを受けるようにしましょう!

インプラントは歯周病になりやすい?

インプラントは歯周病になりやすい?

「インプラントの歯も歯周病になる」という話を聞いた事がありますでしょうか?
事実、インプラントは人工物なので、虫歯になることはありませんが、天然の歯と同じく、歯周病になりますし、その進行は速いと言われております。厳密にいうと歯の周りではなく、インプラントの周りの炎症なので「インプラント周囲炎」と言います。

インプラント周囲炎とは

では、歯を失った部分にインプラントが入れば、治療は終わりなのでしょうか?
はじめにお伝えしたように、インプラントの歯は天然のご自身の歯よりも炎症が進みやすいため、その後はいかにインプラントをきれいにケアして、ずっと使えるようにしていくかが大切になってきます。
そのために、きちんとした歯磨きや歯間ブラシ、デンタルフロスなどのホームケアと歯科医院での定期的なメインテナンスが重要になってきます。もしホームケアがしっかりとできていない、メインテナンスをきちんと受けていない場合、インプラントの周りに歯周病菌などの細菌の塊(歯垢、プラーク)が残った状態が続きます。

そして、天然の歯が歯周病になるように、インプラントもインプラント周囲炎になっていきます。

インプラント周囲炎の種類
インプラント周囲粘膜炎

インプラント周囲の炎症が上部の歯ぐき(歯肉)だけにとどまっている状態。

初期症状としては、天然の歯が歯肉炎になるのと同じように、まずはインプラント周囲の歯ぐきが軽く腫れる、歯ブラシで血が出る、赤くなると言った軽度の症状が現れます。この時点では、まだインプラントを支えている顎の骨は溶けていません。
この状態を「インプラント周囲粘膜炎」と言います。

インプラント周囲炎

インプラント周囲の炎症が深部に進み、インプラントを支えているあごの骨(歯槽骨)を溶かし始めている状態。

インプラント周囲粘膜炎の段階でしたら、きちんとした歯磨きや歯科医院でクリーニングを受けることで、炎症が治ることが多いです。
しかし、インプラントの周囲の炎症がさらに進行していくと、次第にインプラントを支えているあごの骨を溶かすようになります。それに伴い、インプラント周囲歯ぐきが大きく腫れたり、膿が出たり、ズキズキ痛むようになります。
この状態を「インプラント周囲炎」と言います。

天然の歯と違って、インプラントは骨に直接くっついているため、骨が少しでも残っている限り、インプラント がグラグラしてくることはありません。
また、天然の歯のように歯根膜という免疫防御の膜もないため、骨が溶けるスピードは速いです。
インプラント周囲の骨が完全に溶けてしまうと、歯周病の歯と同様、インプラント がグラグラして、最終的には抜かないといけなくなります。

治療方法としては、インプラント周囲粘膜炎と同様、きちんとした歯磨き、専用の器具を用いたインプラントの周りの清掃に加えて、抗菌薬の投与、場合によっては歯ぐきを切開してめくり、中のインプラントを直接清掃する手術が必要なこともあります。
骨が完全に溶けている場合は、インプラントを取り除くしかありません。

「インプラント周囲炎」が進みやすい理由 

①インプラントには「セメント質」がない

天然の歯も根っこの部分があごの骨に支えられていますが、天然の歯の根っこには「セメント質」で覆われています。
セメント質があることで、歯茎とコラーゲン繊維を介して、強固にくっついているため、防御力が高く、細菌が侵入しにくい構造になっています。
インプラントにはセメント質がないため、歯茎とは弱くくっついているだけなので、少しの磨き残しでも、歯周病菌が歯茎の中に侵入していきやすく、炎症が進みやすいのです。

②インプラントには「歯根膜」がない

天然の歯の根っこの周りには、「歯根膜」という薄い膜があります。
この膜の中は細かい血管が多く通っており、それにより免疫機能か働くため、免疫力が高いです。
しかし、インプラントには歯根膜がないため、免疫力が低く、炎症が進みやすいです。
また歯根膜はクッションの役割もしているため、天然の歯では噛む力がその歯にかかりすぎないように、分散する役割がありますが、歯根膜のないインプラントは少しでも噛み合わせが高いと、骨に直接噛む力がかかり、炎症を早める原因になります。

③インプラントは構造が複雑で清掃しにくい

歯がないところに、インプラントにより歯を補うため、歯の頭の大きさは天然の歯と同じですが、支えている土台が、天然の歯と比べるとどうしても細いため、頭と土台の部分に汚れがたまりやすくなります。
また、土台部分は細く、歯茎の中に隠れていることが多いため、歯ブラシだけではきれいにすることが難しく、歯間ブラシやデンタルフロスは絶対に使っていただく必要があります。
また、天然の歯の根っこは比較的まっすぐですが、インプラントの根っこはネジの構造をしているため、ギザギザした部分に細菌が残ると、ご自身では取り除くのが困難になってしまいます。

インプラント治療に関するQ&A

インプラントは誰でも受ける事ができますか?

条件が揃っていれば年齢問わず、治療を受ける事ができます。

まずは局所的な問題がないか。例えば、インプラント治療を行う部分以外に、虫歯や歯周病がないか。インプラントを入れる部分の骨の高さや幅が十分にあるか。歯ぎしりや食いしばりをしていないか。歯を入れるためのスペースが残っているか、などです。

そして、全身的な問題がないか。例えば、糖尿病の数字は問題ないか。インプラントは顎の骨を触るので、骨粗鬆症になっていないか。あとは手術に影響を及ぼす、高血圧や心疾患、脳疾患、自己免疫疾患などがないか。あとは、喫煙も全身的なリスクになります。

条件を満たさない場合は、まずは条件をクリアできるよう、虫歯や歯周病、その他全身のお病気の治療が必要になります。
部分的に骨が足りない場合は、先に骨を作る手術が必要な場合もあります。

治療期間はどれくらいですか?

約4ヶ月~1年かかります。

状態にもよりますが、歯が抜けて期間がたっている場合、歯茎や骨に問題がなければ、インプラントを入れる手術を行います。顎の中に入れられたインプラントが、顎の骨と時間をかけてくっついていきますので、約3ヶ月待ちます。その後、歯を作るための型取りをして、人工の歯を入れますので、インプラントの手術をしてからは、約4ヶ月でインプラント治療は終わります。

まだ、抜かないといけない歯が、お口に残っている場合は、歯を抜いてからそこの部分の治りを待たなければいけません。2~3ヶ月の治りを待ってからインプラントの手術になりますので、歯を抜いてからは約半年くらいでインプラント治療は終わります。

インプラントを入れる部分に、骨が全然ない場合は、インプラントを入れる前に骨を作る手術が必要になる場合があります。その場合、作った骨が、ご自身の顎の骨とくっつくのに約半年待ってから、インプラント治療になるため、最終的に歯が入るまでは1年くらいかかります。

インプラントでしっかり噛めるようになりますか?

ご自身の歯と同じくらいかめるようになります

入れ歯では基本的には、軟らかく力がかかると少し動く歯茎の部分で噛む力を支えるため、ご自身の歯と比べて噛む力は約30%になると言われます。しかし、インプラントはしっかりとした硬い顎の骨で噛む力を支えるため、ご自身の歯と同じように力を加えて噛むことができるようになります。

インプラントの手術は痛いですか?

痛みの感じ方には個人差がありますが、一般的に埋まっている親知らずを抜いたり、痛みの強く出ている歯の神経を取る処置よりは、痛みは少ないと思います。

インプラント治療では歯ぐきを少し切り、骨に穴を開けてインプラントを埋め込みますが、インプラント本体の大きさは、歯の大きさよりもずっと小さいため、そこまで体へのダメージは少なく、痛みや腫れも出にくいです。

正し、一回に入れるインプラントの本数が多い場合や、骨が少ない部分があり、骨を作る処置を併用した場合などでは、触る範囲も大きくなるため、痛みや腫れを伴う場合があります。

インプラントはどれくらい持ちますか?

10年後に約90%残っています。
体のことなので、100%ということは絶対にありませんが、医療で90%というとよっぽどのことがない限り問題ないという数字です。もちろん、インプラントを入れる手術の前には、しっかり長持ちするか診断しますし、歯周病がすごく進行していたり、歯ブラシをきちんとできない方、糖尿病の数字が悪い方などには、インプラント治療はしないこともあります。

無事に人工の歯が入ってからは、ご自身でしっかりとしたケアをして頂き、歯科医院でも定期的に問題がないかチェックし、ご自身ではケアがしにくい部分を、専用の機械を使ってクリーニングします。

そうすることで、問題がないかぎり、長い間使っていただけると思います。

金属アレルギーがあるけどインプラント治療は可能ですか?

基本的には問題ないと思われます。
インプラントには主に「チタン」という金属が使われております。チタンは、基本的にほとんどアレルギーが出ない金属です。今までチタンによりアレルギーが出たという報告はほとんどありませんが、もし気になる方は皮膚科などでパッチテストを行こない、自分がどの金属にアレルギーがあるのか、チタンは問題ないかを確認してみると良いでしょう。

費用はどれくらいしますか?

1本あたり40万くらいです。

治療の選択肢として多く選ばれるようになってきたインプラント治療ですが、日本ではまだまだ保険が効きません。インプラントには、インプラント本体の費用や、手術代(最近ではコンピューターでインプラントを入れる位置をシミュレーションし、そこにズレのないようインプラントを入れるための道具を用います、その診断料や材料代も費用も含みます)、型取りの費用、被せ物の費用、被せ物を作る費用などが含まれております。

その他、骨が足りない部分に骨を足したり、骨を作ったりする費用が別でかかってきます。

支払い方法は?

現金、クレジットカード、振り込み、ローンがあります。
支払いも、まとめて一括でも可能ですし、手術はの時に手術代、被せを入れるときに被せものの費用と分けていただいても構いません。また、当院では84回まで分割払いができるデンタルローンを導入しておりますので、気軽にご相談ください。

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