歯ぐきが大きく腫れている、痛みはないが腫れているところを押すと膿が出る、といった症状がある方はいませんでしょうか?
健康な歯ぐきは腫れていませんし、ましてや膿が出ることはありません。
歯ぐきが腫れる、膿が出るということは、強い炎症がてている証拠です。
では、なぜ膿が出るのか、またどういった原因が考えられるかについて、今回はお話しさせていただきます。
なぜ膿が出るのか
歯ぐきからドロドロとした黄色い膿が出ることがあります。
場合によっては強い臭いがして、口臭の原因にもなります。
実は、膿の中身は細菌だけではありません。
むし歯菌や歯周病菌などの細菌も含まれていますが、膿の大部分は、細菌感染した部分を治そうとして、ご自身の免疫細胞である白血球などが、細菌と戦って死んだ死骸です。
膿が出るということは、それだけ炎症が強く出ている証拠になります。
ではなぜ、歯ぐきから膿が出るくらい炎症が出ているのか。
歯ぐきから膿が出る場合、歯ぐきや周りの歯周組織に炎症が起こっています。
膿が出る可能性がある原因についてお話しさせていただきます。
膿が出る原因
歯周病(歯ぐきの炎症)
歯と歯ぐきの間には溝があり、歯周ポケットいう溝があります。
健康な方でも1〜3mmの歯周ポケットが存在しますが、4mm以上になると歯ぐきの深いところで歯周病菌が繁殖します。
深い歯周ポケットの中は、歯ブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスでは届きません。
また、歯ぐきの中の密閉された空間では、酸素を嫌う悪い歯周病菌が増えていきます。
そうなると、炎症が進み、歯ぐきが腫れたり、膿が出たり、場合によっては痛みも伴います。
膿は、歯と歯ぐきの間の歯周ポケットから出ることが多いです。
根尖性歯周炎(歯の根っこの炎症)
大きなむし歯が進行すると、歯髄(歯の神経)にまでむし歯菌が侵入します。
むし歯菌や歯周病菌は、歯の内部から歯の根っこまで進み、歯の根っこから外に出て、周囲のあごの骨に炎症を広げていきます。
炎症が広がることであごの骨の中で膿が溜まり、歯ぐきを突き破って膿が出ることがあります。
膿は、歯の根元から離れた、根っこの先端付近から出ることが多いです。
膿が出ている場合、あごの骨の中で広がる炎症による圧力が逃げるため、強い痛みは出ないことが多いです。
親知らずの炎症
親知らずは、奥の方にあったり、斜めに生えていたりするため、どうしても磨き残しが出やすくなります。
親知らずと歯ぐきの隙間から細菌が入り込むと、歯ぐきやあごの骨の中で強い炎症を起こします。
智歯周囲炎といい、強い痛みや歯ぐきの腫れ、膿が出ることがあります。
膿は、歯と歯ぐきの間の歯周ポケットから出ることが多いです。
歯根破折
歯根破折とは、歯を支えている歯の根っこ(歯根)にヒビが入り、割れてしまうことです。
むし歯が大きかった歯や、根っこの治療(根管治療)をした歯など、残っている歯が薄い部分に、歯ぎしりや食いしばりなどの強い力がかかることで、歯根破折が起こります。
ヒビが入った亀裂に沿って、細菌が歯ぐきやあごの骨の中に侵入し、炎症を起こします。
歯ぐきが腫れたり、膿が出たり、場合によっては痛みも伴います。
膿は、歯と歯ぐきの間の歯周ポケットから出ることが多いです。
抜歯した部分に歯が残っている
歯の根っこが曲がっているため、歯を抜く際に根っこが折れてそのまま残っている。
むし歯でボロボロだったり、細かく削って抜いた歯の破片が残っている。
歯を抜いた際にきちんと取り残しがないか確認しますが、深い部分や出血が多い場合、どうしても見落としてしまうことがあります。
多くの場合は、そのままあごの骨の中に残ったり、自然に歯ぐきから出てくるため、問題はありません。
しかし、残った歯に細菌が感染した場合、痛みはなくても、歯ぐきに穴が開いていて、そこから膿が出ることがあります。
いかがでしたでしょうか?
「膿が出る」ということは、強い痛みがなくても、炎症が広がっている証拠になります。
自然に治ることはありませんので、早めに歯科医院を受診して、原因の治療を受けましょう。