歯を抜いた後、とくに奥にある親知らずを抜いた後は、ダメージも大きく、しばらくは痛みや腫れが出るでしょう。
通常、歯を抜いた後は、歯茎と顎の骨に穴が開いた状態になります。
細かい血管から血液が集まり、血餅というかさぶたができて、徐々に歯茎や顎の骨を治していきます。
時間をかけて、抜いた部分が治っていくにしたがい、痛みは軽減していきますが、何日たっても激しい痛みが引かない、痛み止めも聞きにくくズキズキした痛みが続くことがあります。
その場合は、治癒不全による「ドライソケット」かもしれません。
今回は、お口の中の痛みでも、激しい痛みを伴うドライソケットについてお話しさせていただきます。
ドライソケットとは
ドライソケットとは、親知らずなどの大きな歯を抜いた後、抜いた穴の部分の治癒不全により、穴が塞がらず骨が露出したままの状態のことをいいます。
通常、歯を抜いた後は、周りの歯茎や骨の血管から血液が集まり、血餅という血の塊(かさぶた)が出来ることで、抜いた後の穴を塞ぎます。
そして、徐々に抜いた部分の歯茎や骨を治していき、穴が塞がっていきます。
しかしドライソケットでは、何らかの原因で血餅ができず、日にちが経っても抜歯した部分の治癒がはじまらず、骨がむき出しの状態が続きます。
ドライソケットの症状
抜歯とは、そもそも大きな歯を抜いていますし、場合によっては歯茎を切ったり、骨を削って親知らずを抜く場合は、しばらく強い痛みが続きます。
麻酔が切れる頃から、少しずつズキズキと痛みが出ると思います。
また、抜歯後2〜3日は歯茎やほっぺも大きく腫れる場合があります。
しかし、多くの場合は、鎮痛薬を飲むことで、痛みはある程度落ち着きますし、日を追うごとに腫れや痛みは和らいでいきます。
通常1週間もすれば、痛みは治ってくることがほとんどです。(骨の深い部分に埋まっている親知らずを、大きく骨を削って抜いた場合は、2週間ほど痛むことがあります。)
これに対しドライソケットでは、我慢できないほどの激しい痛みが何日も続くことが特徴です。
痛み止めも効きが悪く、お口の中で生じる痛みの中でも、かなり激しい痛みだと言われます。
以下のような症状がある場合は、ドライソケットかもしれません。
- 親知らずを抜いた日よりも、日を追うごとに痛みが強くなってきている。
- 親知らずを抜いた後、1週間以上たっても痛みほとんど治らない、悪化している。
- 何もしなくても激しくズキズキと痛む
- 何日か経過しても、痛み止めを飲んでも痛い
- 風が当たったり、飲食時の刺激により、強い痛みが出る
- 傷口が大きく陥没している
ドライソケットの原因
ドライソケットの原因は、歯を抜いて抜き出しになった骨を覆う血餅(血の塊、かさぶた)ができないことです。
血餅ができない要因には様々あります。
何度もうがいをする、激しくうがいをする
歯を抜いた直後は、出来るだけ安静にし、強いうがいは控えるよう指示がされるはずです。
しかし、抜いた部分が気になったり、食事の際に食べ物が抜いた部分に入ることで、洗い流そうと何度もうがいをしたり、ブクブク泡立てるような強いうがいをする方もいると思います。
うがいにより、できたばかりの血餅が洗い流されることで、抜歯後の治癒が遅れる原因になります。
何度も血餅が流されると、骨が剥き出しの状態になり、ドライソケットになります。
抜歯後2〜3日はうがいはブクブクせず、口にお水を含んで吐き出すくらいにしましょう。
歯を抜いた部分を指や舌、歯ブラシで何度も触れる
強いうがいは控えていても、抜いた部分が気になったり、抜いた穴に残った食べかすを取ろうと、指や舌で何度も触ってしまう方もいるでしょう。
場合によっては、歯ブラシできれいにしようと、歯を抜いた部分の中の方を触る方もいるかもしれません。
外部からの刺激により、せっかくできてきていた血餅が剥がれてなくなる場合がありますので、これも2〜3日は安静にして、抜歯した部分は気になると思いますが、極力触らないようにしましょう。
指で触ることは、細菌感染を起こす原因にもなりますので、絶対にやめましょう。
安静にせず血行が良くなることをする
歯を抜いた後は、激しい運動や飲酒、長風呂などの血行が良くなることは控えるようにと指示をされると思います。
しかし、麻酔が効いていたり、痛み止めを飲んでいて、歯を抜いた後の痛みがあまりないと、どうしても激しい運動や飲酒、長風呂などをしてしまうかもしれません。
そうなると、血行が良くなり、歯を抜いた部分から血が出て、しばらく止まらなくなることがあります。
血が出るということは、血餅が作られやすくなるのですが、どうしても血が出ていると指や舌で触ったしまったり、何度もうがいをして、血餅を取ってしまうことにつながります。
少なくとも抜歯の当日は、安静にして結構が良くなることは控えて、傷口が開かないようにしましょう。
タバコを吸っている
喫煙をしていると、一酸化炭素やニコチンの効果で、血液の流れが悪くなってしまいます。
歯を抜いた後も血が出る量が少ないことで、十分な血餅が作られずに、治癒不全でドライソケットになる可能性があります。
ドライソケットの治療法
消毒と抗生剤、鎮痛薬で経過を見る
基本的には、骨がむき出しの部分に細菌が入って感染しないよう、歯を抜いた部分の消毒を行います。
そして、抗菌作用にある軟膏を、歯を抜いた穴に入れ、ガーゼなどで保護します。
加えて、抗生剤や痛み止めを処方し、経過を見ていきます。
多くの場合は、治癒が促されることで、1~2週間くらいたてば痛みが引いていくでしょう。
再掻爬をし縫合する
どうしても痛みが引かない、歯を抜いた部分の治りが悪い場合があります。
その場合は、きちんと麻酔をしてから、歯を抜いた部分、血餅ができず治癒不全により骨が抜き出しのまま部分の表面を、器具を使って掻き出す(掻爬:そうは)ことで、骨や歯茎の表面の毛細血管を露出させて、血餅が作られるようにします。
場合によっては、指や舌で触ったり、強いうがいで血餅が取れないように、歯茎を糸で縫い付けます(縫合)。
ドライソケットにならないために
ドライソケットにならないためには、血餅(血の塊、かさぶた)が作られること、そして血餅が取れないようにすることです。
すなわち、歯を抜いた時に歯科医院で受ける「抜歯後の注意事項」を、きちんと守ることです。
ドライソケットに関係するところだと、
- 歯を抜いた当日は、入浴や飲酒、激しい運動は控えましょう。
- 傷口を舌や指で触らないようにしましょう。
- 歯ブラシは、傷口に触らないように気をつけてください。
- しばらくは強いうがいは控えましょう。
- 加えて、日頃から禁煙をしましょう
抜歯した日は体も安静にし、2〜3日は歯を抜いたところをあまり触らないようにしましょう。
私自身も実際経験しましたが、ドライソケットというのは我慢できないほどの激しい痛みが、何日も続きます。
痛み止めを飲んでもあまり痛みは治らず、食事や睡眠、私生活にも大きな影響を与えます。
今思うとドライソケットになった原因は、気になって何度もうがいをしてしまったことだと思います。
しっかりとうがいをして、お口の中をきれいにした方がいいと思っていたのです。
もちろん、深く埋まっている親知らずを、骨を削って抜いた場合は、単純に体へのダメージが大きく、しばらく痛みが続くこともあるので、「痛みが続く=ドライソケット」ではありません。
しかし、ズキズキした痛みが全然引かない、日に日に痛みが強くなっている場合は、ドライソケットの可能性もありますので、早めに歯科医院を受診するようにしましょう。