- お口を大きく開けにくい
- 大きく開けると顎のあたりがカクンと鳴る
- 顎が痛くてお口が開かない
- ほっぺたを押すと痛みを感じる
このような症状がある場合、「顎関節症」の可能性があります。
歯や歯茎のトラブルではないですが、歯医者は「お口を診るところ」ですので、症状が気になる方は歯科医院の受診をお勧めします。
今回は、「顎関節症」について、どういう病気なのか、またどういった方がなりやすいか、どういう治療法があるのかなど、全般的なお話をさせていただきます。
顎関節症とは
顎関節症とは、顎関節やあごを動かす筋肉(咀嚼筋)に痛みを生じる、顎を開ける時にカクカクやゴリゴリと音がする、お口が開けにくい、などの顎関節周りに症状が出る疾患のことです。
似たような症状がでる病気に関節リウマチや外傷性顎関節炎がありますが、これらとは区別されます。
「お口を口を大きく開け閉めしたとき、あごの音が鳴る」割合は約15%、「お口を大きく開け閉めしたとき、あごに痛みがある」割合は約3.3%です。(平成 28 年、厚生労働省歯科疾患実態調査)
顎関節症の症状
軽度の場合はお口を開けるときに、顎関節のあたり(耳の穴の近く)で音が鳴ることが挙げられます。
右、左両方鳴る場合もあれば、どちらか一方の顎関節だけ音が鳴る場合があります。
これは顎の骨と顎関節の骨の間にあるクッション(顎関節円板)が正常に動かず、引っかかって音が鳴るためです。
音が鳴るだけで、顎関節や咀嚼筋(ほっぺやこめかみ付近の筋肉)に痛みがなければ、経過を見ることが多いです。
症状が強く出て、「口を開けると顎が痛い」、「顎が痛くて食事がしにくい」、「顎が痛くてお口が開かない」など生活に支障をきたす場合は、歯科医院を受診しましょう。
顎関節自体に痛みがあるのか、咀嚼筋に問題があるのか、あるいは両方なのかしっかりと確認する必要があります。
顎関節症の原因
顎関節症の主な原因は、顎関節に過度な負担がかかっていることが考えられます。
考えられる原因としては、
- 夜間に歯ぎしりをしている
- 日中に食いしばりをしている
- TCH(歯列接触癖)のような口腔習癖がある
- 頬杖やうつ伏せ寝などあごに負担がかかっている
- 食事の時にどちらか一方で噛む癖がある(右噛み、左噛み)
- 歯並びや噛み合わせが悪い
- もともと顎関節の形態が悪い
ことなどが考えられます。
歯ぎしりや食いしばりが起こる原因としては、姿勢が悪いことや、精神的・身体的ストレスがかかっていることなども考えられます。
歯並びや噛み合わせが悪いのには、元々の歯並びである場合もありますが、むし歯や歯周病を放置してきていることで歯並びや噛み合わせが悪くなっている場合があります。
特に噛み合わせに関しては、上と下の前歯がうまく噛んでいない噛み合わせ(下顎前突、開咬)の場合、奥歯の負担が大きく、それにより顎関節に負担がかかりやすく、顎関節症となる場合が多いです。
顎関節症の分類
顎関節症は、顎関節が原因の痛みだけではなく、あごを動かす咀嚼筋が原因であったり、顎関節と顎の骨の間の柔らかいクッション(顎関節円板)が原因の場合など様々な種類があります。
原因によって、以下のように分類されています。
- 咀嚼筋障害(Ⅰ型)
- 顎関節痛障害(Ⅱ型)
- 顎関節円板障害(Ⅲ型)
a.復位性
b.非復位性 - 変形性顎関節症(Ⅳ型)
顎関節症の診査・診断
まずはお口の中も含め、どういった症状があるのか、どこがどういう風に痛むのか、顎関節に負担がかかりやすい日常の癖や歯並びではないかなどを確認します。
顎関節症と同じような症状が起こる病気と区別することも大切です。
歯科医院ではまず、パノラマエックス線写真という顎関節周囲も見れる大きなレントゲンを撮り、顎関節の骨に変形などの異常がないか、顎関節症が生じる原因は何かないかを確認します。
そして症状がいつから、どのように始まり、どういうふうに経過しているかを確認し、顎関節や咀嚼筋、お口のなかの診査を行います。
明らかな原因がはっきりしない場合は、顎関節と顎の骨の間のクッションである顎関節円板に異常がある場合もあるため、大学病院などで軟組織をよく見るためにMRI検査をすることがあります。
顎関節症の治療
来院時に、顎が痛くてお口が開かない、食事ができないといった強い症状の場合は、炎症を抑えるために鎮痛薬を処方します。
ある程度症状が落ち着いている場合、噛み合わせに影響しそうなむし歯がある場合は、治療を行います。
そして顎関節症の一般的な治療法は、顎関節への過度な負担を減らすためにマウスピース(スプリント、ナイトガード )を作製し、噛みしめたときに顎関節や咀嚼筋へ過度な負担がかからないようにする治療を行います。
また、日中の食いしばりやTCHはご自身で気をつけていただき、顎への負担を減らします。
日頃からあまりお口を動かしたり、大きく開けない方は、お風呂などで顎関節や咀嚼筋をマッサージしたり、大きくお口を開ける開口訓練も有効です。
姿勢が悪い方は気をつけ、ストレスはなるべくためないようにしましょう。
歯並びや噛み合わせが悪い場合は、矯正治療もお勧めです。
これらの方法で、改善が見られない場合には、外科的な治療が必要になる場合もあります。
顎関節症にならないために
顎関節症にならないためには、顎関節に負担がかかることを控えることが大切です。
日中の食いしばりがないかないか気をつける
集中していたり、緊張して何かに取り組んでいると、どうしても歯を食いしばることで顎に負担がかかります。
何度も食いしばっていないかを意識して、気をつけるようにしましょう。
TCH(歯列接触癖)を気をつける
食事や会話の時以外は、安静空隙といって、上と下の歯は約2mmほど離れているのが正常です。
歯が離れていることで、顎関節に負担がかからず、顎関節もリラックスできます。
TCH(歯列接触癖)は、食いしばっているわけではないですが、常に上と下の歯が当たっている状態です。
これにより顎関節に対して軽度な力ですが、長時間負担がかかることになるので、気をつけるようにしましょう。
夜間に歯ぎしりをしている場合はマウスピースを付けて寝る
顎関節症の1番の原因と言ってもいいのは、夜間の歯ぎしりです。
寝ている時なので、食事の何倍もの噛む力が、長時間にわたって顎関節に加わるため、顎関節症の原因となります。
歯ぎしりは知覚過敏や歯周病、歯が割れたりする原因にもなりますので、自覚がなくても歯医者で指摘を受けた場合は、マウスピースを作り、装着するようにしましょう。
むし歯や歯周病の治療は早めに受ける
むし歯や歯周病を放置していると、痛み等はなくても、噛みにくい、食べ物が挟まると言った理由で、反対側だけで噛む癖がついたりします。
特に歯を抜いて放置している場合は、どうしてもそうなってしまいます。
そのことで、片一方の顎関節ばかり使い、大きな負担がかかります。
顎関節症のためだけでなく、歯を残すためにも、むし歯や歯周病の治療は早めに受けましょう。
そしてむし歯や歯周病にならないように、定期検診も受けるようにしましょう。
片一方で噛む癖をやめる
癖で右でよく噛む、左でよく噛むという方がおられます。利き腕や利き足は誰にでもありますが、顎関節は左右2つの関節があるため、片側に偏ると顎関節に負担がかかります。
単なる癖でしたら、気をつけてなるべく左右均等に噛むようにしましょう。
片一方で噛む理由がある、例えば大きなむし歯があって噛みにくい、歯を抜いたままで噛めない、右よりも左の方が歯並びが良くて噛みやすいなどの理由がある場合は、それらの治療が必要な場合もあります。
頬杖やうつ伏せ寝をやめる
頬杖やうつ伏せ寝をすると、どうしても片一方の顎関節に負担がかかるため、顎関節になりやすくなります。
顎がずれる原因にもなりますので、控えるようにしましょう。
ストレスを発散する
歯ぎしりや食いしばりの引き金になるのはストレスと言われています。
肉体的なストレスでしたら、ゆっくりお風呂に浸かったり、しっかりと睡眠を取るようにしましょう。
精神的なストレスでしたら、没頭できる趣味を作ったり、極力心のうちにため込まないようにしましょう。
矯正治療を行う
きれいな歯並び、きれいな噛み合わせの場合、少しくらい噛む力がかかり顎関節に負担が生じても、顎関節症となることは少ないです。
やはり歯並びや噛み合わせが悪く、どちらか一方の顎に負担がかかりやすかったり、前歯が噛んでおらず奥歯の負担がつよう場合には、顎関節症になりやすくなります。
見た目の改善以外にも、様々なメリットがあるため、矯正治療をお勧めします。
いかがでしたでしょうか?
急に顎が痛くなったり、お口が開かなくなると不安ですよね。
しかし、症状が出るからには何か原因があります。
気になる症状がある場合は、早めに歯医者を受診し、原因の解明や治療を受けるようにしましょう。
当院では、顎関節症の方の治療も行なっております。
お気軽にご相談ください。